僕達小学生 |
小上京介と葵駿。
この二人が出会ったのは小学生の時であった。
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今から8年前、二人は小学校4年生。
そろそろ春休みに入ろうかと言う時期、3月もすでになかばというある日に事件は起こった。 京介と駿のお馴染の遊び場、『わかば公園』では今日も多くの子ども達が遊んでいた。
「京ちゃん、パスパス!」
仲間の声に反応して、京介は方向を確認してからパスを出した。
小上京介、10歳。
パスを受けた京介はそのままシュート。
「スゴイや京ちゃん。将来はプロのせんしゅになれちゃうね!!」
仲間に囲まれた京介は将来の夢を語った。
突然ざわざわと公園の出入り口が騒がしくなった。 「今からここは俺達が使うんだ、他のやつは出ていけ。」
6年生軍団は予想通りの行動に出た。
「ねぇ京ちゃん、早く違う公園に行こうよ。」 まさかコイツ知らないんじゃ……、説得にかかっていた仲間達は一斉にそう思った。 「ごちゃごちゃ行ってねぇでさっさとどっかに行け。」 しびれを切らしたように6年生軍団の頭らしき人物が怒鳴り散らした。 「なんで? てゆうかあんた達ダレ?」
言っちゃった!
「あ?俺達を知らないのか?俺達は6年生様だ!だからここは俺達のものなんだよ。」
明らかに京介のものとは違う声が聞こえてきた。
葵駿、10歳。この時から周りより少し背が高かった。
「なんだと?」
6年生軍団の怒りの矛先は完全に京介から駿に変わったようだ。
「じゃぁサッカーで勝負してお前らが勝ったら俺達はもう占拠はしない。それでいいだろう。」 あっというまに6年生軍団と駿達の間で試合の約束がなされてしまった。 「ねぇ、僕達の方人数足りないんだけどあと二人混ざってくれる?」 駿は京介達グループに応援の要請をした。
「僕やるよ、でもあともう1人足りないね。えと、卓君!やろう?」
卓と呼ばれた少年は少々ためらったがすぐに了承した。 「そっちも人数が揃ったみたいだし、すぐに試合開始といきたいところだが、まず作戦タイムをやるよ。10分後に始めるからな。」
どこまでも偉そうな6年生である。
「えっと、まずは名前教えてくれる?僕は葵駿。」
この後も残りの少年達が名乗っていく。 「オラー始めるぞ!さっさと準備しろ。」 6年生軍団の掛け声でキックオフ。
試合はあっさり終了した。 「お前ら強いのな。約束通りもう占拠とかはやめるよ。」
そう言い残して6年生軍団は帰って行った。
「やったね、京ちゃん!さすがだね!!」 京介はずっと試合を見守っていた仲間達に囲まれていた。 「ん?でもね……」 京介は取り囲む友達をかき分け、駿の方へ向かって行った。 「僕がゴール出来たのは駿君のパスのおかげだよ。すっごい楽しかった!」
ありがとう、と京介は右手を差し出した。
それ以来、度々二人が一緒に遊んでいる光景が見られた。 一ヶ月後、京介と駿が5年生になった時のクラス替えでは……
「あ、駿君!同じクラスだね!!」
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「懐かしいよなー。」 小学生時代のアルバムを見ながら呟いた京介の手元を除いた駿はそこにあるものを見て納得した。 そのアルバムには二人で仲良く写っている写真が多数収められていた。
今日は日曜日。部活は珍しくオフだったので、駿は京介の家に遊びに来ていた。
「なんか飽きて来たなー。……駿!外行こうぜ外!!」 ベッドに寝転がってずっと大人しくアルバムを見ていた京介は、突然がばっと起き上がり騒ぎ始めた。
「そこのわかば公園にサッカーしに行こう!」 ボールを持って立ちあがった京介はさっさと部屋を出て行ってしまった。 「仕方ねぇな。」 駿も続いて部屋を出ていった。
これから向かう『わかば公園』は二人が初めて会った場所。
しかし、誰もそんなことは覚えていないだろう。
―――― 今、自分達は共にここにいる。それだけで十分だろう。
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