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「さて、初顔合わせか。」
選挙の翌日、新生徒会役員達は生徒会室に集合していた。
「これから一年間は仲間としてやっていくんだ、ヨロシクな。とりあえず自己紹介でもしておくか。
新会長の宮川眞輝です。眞輝で構わないから。」
笑いを浮かべながら眞輝は京介を見た。 「いや、聞いてくれよー。マジで!俺さ、生徒会なんて考えたこともなかったんだけど、前に部活遅刻した時にさ、罰走に外周プラス30週覚悟してたらキャプテンがいきなり『走らなくてもいい』って言ったんだよ。あのキャプテンのことだから絶対何か裏があると思ってたんだけど、本当に裏があって突然お前生徒会役員に立候補しろって言いだしたんだよ。」 熱弁は更に熱をおびていった。
「でさ、ここで断わったら、どうなるかわかったもんじゃないから一応立候補はしたけど、本当に当選するなんて思ってもみなかったんだって。しかも副会長だぜ?!ありえないだろう!!」
今も熱冷めやらぬといった様子の京介の背中を駿は引っ張り椅子に戻した。 「痛ってぇ〜!」
頭をさすりながら京介はむくっと起き上がった。
「キャプテンって相模さんか?」
誰も京介の心配などしなかったが本人はたいして気にしてはいなかった。
「いや、当たり前だろ。まず、京介と駿はサッカー部でかなり有名だし、そのキャプテンっていえば元会長だろ?自然に繋がるって。」 未だに自分が有名人であるという自覚が全くない京介は海斗の説明によって多少は納得したようだ。 しかし何故自分が有名人なのかはまだわかっていなかった。 「相模さんってさ、マジすごい人だよな。」 椅子の背もたれに寄掛かり腕を組みながら、眞輝は例の『見た目超いい加減。思いつき要注意。何があっても逆らうな!』というキャッチフレーズを持つ元生徒会長であり現サッカー部キャプテンについて語り始めた。眞輝は毎年学級委員長という役柄を務めていたので、元会長である相模との接点も少なくなかった。 「俺、委員会とかであの人の仕事っぷりいつも見てたけど、見ためかなりいい加減そうなのに、仕事マメだし完璧だし。」 うーん。褒めてるのかけなしてるのか微妙なラインだ。 「そうなんだよな、適当にやるべきところはいい加減で締めるところはちゃんとやるしな。ま、眞輝なら跡継ぎに最適だろう。キャプテンが直々にオファーに行ったんだろ?」 ニヤニヤしながら駿は眞輝を見た。 「なんだ、知ってたのか。いきなり『委員会の後に残れ』って言われてさ、何かと思えば『次期会長はお前に任せる。』だしな。」 そして笑い混じりに、その時一瞬思考回路停止したよ、と付け加えた。 「俺も相模さんに『この学校の財布はお前に預ける!』とか廊下ですれ違い様に言われたぜ。普通ありえないだろう。初め何のこと言ってるかわかんなかったし。」 うわ〜まじうけるんだけど、と周りから声があがった。
「じゃ、全員キャプテンの選抜メンバーってことか。」 そう言ってちらっと隣の京介を見やる。 「はっ、なるほどな。」 眞輝が納得したところで、ガラっと生徒会室の扉が開け放たれた。
「盛り上がってるか、お前ら。」
中に入ってきたのは、顧問の平松だった。 「さっき宮川が職員室来た時に渡すのすっかり忘れてたもん届けに来てやったぞ。」
入り口から一番近い椅子に腰掛けながら眞輝に茶色いB5サイズの封筒を渡した。
「同じ用紙が4枚あっただろ?」 用紙に書かれていることを読みながら眞輝は平松の言葉に同意した。 「それな、報道局からの依頼。来週の火曜までに空欄埋めて直接局長に渡しとけ。」 ……? と全員の頭にはクエスチョンマークが一斉に浮かびあがった。 「知らないのか?毎年この時期に新生徒会役員のプロフィールを学校新聞に掲載してるだろう。それだよ。」
それぞれの手元に配られた用紙を見てやっと全員が納得した。
「あと、残りの1枚はお前らの『今期の活動計画・活動方針』と『今期の活動テーマ』を決めて記入して俺に提出しろ。」
平松は生徒会室の入り口側の壁を親指で指し示した。 「さて、用事も済んだし職員室に戻るわ。まだ仕事残ってるんだよ。」 ドアを開けて生徒会室を後にしようとした時、平松はくるっと振り返って、 「あー、小上と葵。明日からはもっと余裕もって学校来いよ。階段で俺を追い抜かすのはイエローカードだからな。」 そう言い残して職員室へ戻っていった。 「何、お前ら平松っちゃん追い抜かしたわけ?」
ぷぷっと海斗は密かに吹き出した。 「玄関で京介に付き合ってたら遅くなったんだよ。」
むすっとしながら駿は京介を睨んだ。
「それは駿が小言を言うからだろー!」
ぎゃぁぎゃぁわめき始めた京介を眞輝は見事に黙らせてみせた。 「さて、まずはテーマから決めるか。なんか思いついたらとにかく言ってけ。」 眞輝はホワイトボードの前に立ち、マジックを手に取った。 「じゃ、俺議事録取るわ。」
駿は生徒会会議用ノートを開いた。 「はいはい!思いついた!!」
立ち上がって勢い良く手を上げたのはやはり京介だった。 「じゃ、京介の案を聞こうか。」 マジックで眞輝は京介を指した。
+ + +
「(まさかもう完成したとか?)」
半信半疑で用紙をみると、それは完璧に埋められていた。 「へぇ、なかなかやるねぇ。第42期生徒会。今期の活動テーマはコレか。楽しみだな。いろんな意味で。それにしてもコレを生徒会室の前に貼るのか……。信用に関わらんかな?」
これからの彼らの活躍を考えると、自然にこぼれてくる笑みを隠すことはできなかった。 「さてこの先奴らはどう活躍してくれるのか。」
それはすぐにわかるようになる。
『今期テーマについて説明しますと。俺達が東堂学園を変えてやるっていうことで。後ろの星は三ツ星って意味です。ただくっついてるわけじゃないです。それからレストランって意味でもないです。本当は五ツ星にしようと思ったんだけど見た目がしつこいから止めました。起草者→小上京介、アレンジ→第42期生徒会役員』
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