13. 10年後 |
「よし、短冊を書こう」 「え、なんで?」 「いきなりどうした?」 「七夕だからに決まってるでしょ。クリスマスに短冊は書かないよ。アレだよ」 古賀くんが指差す先には日本の風物詩。 笹とそれにぶら下がった色とりどりの短冊。 学校の最寄駅の隣にあるスーパーの入り口の一角にはご丁寧に色紙で作られた短冊とペンが用意されていた。 それが古賀くんの目についたらしい。 私と三宅くんは古賀くんに引っ張られるまま記入台へ。 「はい、記入スタート!」 そう言うと古賀くんは黙々と書き始めた。 それとは逆に私と三宅くんは頭を悩ませた。 「こんなん書くの何年ぶりだよ。何書いたらいいかわかんねぇ」 「うーん。私的にあと半年に迫った受験についての願いを書くかな」 「あぁ、そうか」 数分後、それぞれの短冊が完成。 「よし、見せ合いっこしよう。はい、瀬戸ちゃんから」 古賀くんにふられて、私はペロッと短冊を二人に向けた。 「『第一志望合格』です」 「うわ、普通!普通すぎるよ瀬戸ちゃん!」 「人の願い事にケチつけるのやめてくれないかな!普通でいいよ!あまりに奇抜すぎると織姫と彦星困惑しちゃうでしょ!」 せっかく年に一回、しかも一日しか会えない二人が他人の願い事に頭を悩ませて時間を過ごすとか可哀想すぎる。 「えー。じゃあ、浩紀は?」 「『健康第一』」 「どこの家の家訓さ。もっとフレッシュな願い事ないの?」 「願い事にフレッシュって意味わかんねぇし。夏大も受験も健康じゃねぇとどうにもなんないし。無難だろ」 「無難すぎてつまらない」 「そんな文句言うならお前は何書いたんだよ」 さっきから人の願い事にケチつけまくりの古賀くんだが、本人はどんな願い事を書いているのだろうか。 「俺のはスゴイよ」 そう言って誇らしげに短冊を見せてくる古賀くん。そこに書かれていたのは、 『世界中が幸せになればいい』
「最後がちょっと投げやりなのは何故?」
それだけで幸せだと思った。
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